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著書:スポーツビジネス15兆円の到来
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第1章
スポーツビジネスは有望か?

──『日本再興戦略2016』で描かれる未来

自動車産業を超えるスポーツ産業

ここまで、2016年に発表された『日本再興戦略2016』の内容について述べてきた。この戦略が発表された後も国のスポーツに対する積極的な姿勢は変わっておらず、その後に発表された『未来投資戦略2017』『未来投資戦略2018』においても、スポーツに関する言及がなされている。中でも『未来投資戦略2017』では、『日本再興戦略』において大きな柱として打ち出されたスタジアム・アリーナ改革からさらに一歩踏み込んで、「全国のスタジアム・アリーナについて、多様な世代が集う交流拠点として、2025年までに新たに20拠点を実現する」と、もう一つ新たなKPIを設定している。

国が『日本再興戦略』の中で掲げる「スポーツ産業を我が国の基幹産業へ成長させる」というのは、今の日本のスポーツの状況から考えると、少し飛躍しすぎで突拍子もないことのように聞こえるかもしれないが、すでに述べたように、アメリカではスポーツ産業の規模は約60兆円と言われており、かつての基幹産業でアメリカという国を象徴するような産業でもあった自動車産業を凌いでいるという事実がある。このような事例から考えると、日本のスポーツ産業もこの先の展開如何では、国の基幹産業になれる可能性のある、とても夢のある産業だととらえることができる。また見方を変えると、現状がそれほどでもないということは、これから巨大な伸び代があるということであり、かつアメリカという先行事例もあるので、単純に言うと、それを真似することもできる(そのまま真似るのではなく、日本式にカスタマイズすることが必要だが(*3))という何とも恵まれた状況なのだ。

あとで詳しく述べるが、これまでの日本のスポーツ業界に滔々と流れていた教育的な文脈から考えると、いきなり「スポーツの産業化」と言われても、これまで長らくスポーツに携わってきた人々は、この方針の大転換を前にして、大いに泡を食っているのではないかとさえ思われる。それほどまでにスポーツを取り巻く状況は今、大変革期と言えるような時期を迎えているのである。

(*3)その後、議論が進み、日本版NCAAとして、一般社団法人大学スポーツ協会(UNIVAS)が2019年3月1日に発足した。

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スポーツビジネス15兆円時代の到来

森貴信著/平凡社新書

長らく競技者(選手)のものだった日本のスポーツは、新しいステージを迎え、今後より人びとの暮らしに密着したものになる。すでに起こっている事例を挙げつつ、人・モノ・カネの動きの実際と予想される未来を、スポーツビジネスの最前線で活躍する著者が語る。
そもそも、スポーツは仕事(の場)となりうるのかという疑問に発し、政府が提言する『日本再興戦略2016』のうち、国が〈スポーツの産業化〉を強く後押ししている実態を紹介、その意味をていねいに分析することで、今後、劇的な経済効果を促す異業種との交流や他産業の参入、さらにはスポーツイベントに連動する生活の場と習慣の変化など、スポーツというフィールドに秘められた大きな可能性に迫る。
――進学、就職・転職から共生の場の創出まで、新時代の社会のかたちが見えてくる。