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著書:スポーツビジネス15兆円の到来
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第1章
スポーツビジネスは有望か?
──『日本再興戦略2016』で描かれる未来
明確に数値化されたスポーツの未来
「スポーツの成長産業化」の中身について、『日本再興戦略2016』の中では「スポーツ産業の未来開拓」と題した部分でより詳しく取り上げられている。そしてそれは「数値目標」と「新たに講ずべき具体的施策」の2つで構成されている。
「数値目標」のところでは、具体的な数値として「スポーツ市場規模(昨年[著者註…2015年度]:5・5兆円)を2020年までに10兆円、2025年までに15兆円に拡大することを目指す」「成人の週1回以上のスポーツ実施率を、現状の 40・4%から2021 年までに65%に向上することを目指す」と書かれている(スポーツ市場に数値目標が導入されたということも、これまでを考えると大変画期的なことである)。
これにより、これまであまりよくわからなかったスポーツ産業の市場規模について、2015年度のスポーツ市場の規模が5・5兆円であったと明らかになったと同時に、これを2025年までの10年間で約3倍にするという非常に野心的な目標が、政府によって立てられたのである。
国の公式文書において、スポーツ産業が目指していく市場規模をKPI(キー・パフォーマンス・インジケーター=重要業績評価指標)として具体的に金額で示したことが、ここでは極めて重要である。先ほども述べたが、2015年度現在で市場規模が5・5兆円あるという事実を明らかにすることだけでも一定の効果があったと思われるが(これまでは、市場規模をまとめたデータすら発表されていなかった)、今後2025年までに市場規模を今の約3倍にするという目標は、この低成長時代において客観的に見てもたいそう野心的であり、目指そうとしている成長度合いは誰の目にも(特にこれからスポーツ分野に参入しようと考えている人にとって)魅力的に映る。
このように、目指すべき市場規模がKPIとして示されたおかげで、他の産業からスポーツ産業へ、熱い視線がにわかに注がれるものとなった。すでにこの数年で、スポーツに関連する国際会議や大きなシンポジウムが新しくできるなどの効果があり(例えば、国が主催する初のスポーツ関係の国際会議であった「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」[2016年]や慶應大学が主催する「SPORTS X Conference (スポーツ X カンファレンス)」、日本スポーツ産業学会が主催する「スポーツビジネスジャパン」など)、またスポーツに関連した既存の展示会などにおいても、セミナー開催やブース出展などによる参加企業とそこに訪れる人の数が、大幅に増えているようである。
スポーツビジネス15兆円時代の到来
森貴信著/平凡社新書
長らく競技者(選手)のものだった日本のスポーツは、新しいステージを迎え、今後より人びとの暮らしに密着したものになる。すでに起こっている事例を挙げつつ、人・モノ・カネの動きの実際と予想される未来を、スポーツビジネスの最前線で活躍する著者が語る。
そもそも、スポーツは仕事(の場)となりうるのかという疑問に発し、政府が提言する『日本再興戦略2016』のうち、国が〈スポーツの産業化〉を強く後押ししている実態を紹介、その意味をていねいに分析することで、今後、劇的な経済効果を促す異業種との交流や他産業の参入、さらにはスポーツイベントに連動する生活の場と習慣の変化など、スポーツというフィールドに秘められた大きな可能性に迫る。
――進学、就職・転職から共生の場の創出まで、新時代の社会のかたちが見えてくる。