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著書:スポーツビジネス15兆円の到来
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第1章
スポーツビジネスは有望か?
──『日本再興戦略2016』で描かれる未来
有望なスポーツ業界の事業環境
スポーツ業界というのは他の業界と比べて、将来が見込めるものなのか。果たして市場規模はどれくらいあるのか──。
これまではあまりスポーツ業界の事業環境というようなことが一般的に議論されることは少なかったので、そもそもどれくらいの市場規模があるのかさえ想像するのが難しかった。それを裏付けるようなきちんとした調査も、たぶんこれまでほとんどなかったと思う。体感的にも、また実態としても、スポーツ業界というものはなかなか数字として計測しづらい業界であることは確かであるが、そうとばかり言っていても仕方がないので、ここではスポーツ業界の現在と未来の事業環境について、できる範囲で整理をしてみたい。
いきなりだが、結論から先に言おう。
日本におけるほとんどの産業では、これからの少子高齢化に伴う人口減少の影響で市場が確実に縮小すると見られているが、スポーツ業界についてはその大きなトレンドには当てはまらず、この先、大変有望な事業環境にあると見られている。先進国の中でも特に成熟社会と言われている日本において、市場が確実に拡大すると予想されている産業というのは実はあまり多くない。人口が減るということは、つまり消費者の数が全体的に徐々に減っていくということだから、ある意味それは当然である。だが、我が国におけるスポーツ産業はそれらに反して、これから市場が確実に拡大すると予想されているのである。それもかつてないスピードで、だ。一体なぜなのだろうか。
日本では統計調査などで、これからは少子高齢化で人口減となることがわかっているため、日本中の企業はどこも新規事業を創出する必要に迫られている。これまでやってきた既存のビジネスだけでは、市場縮小に伴って売上高が自然に減っていくことが予想されるからである。一方、消費者の方では社会が成熟してきたことに伴って「モノ消費からコト消費」と言われるように、これまでのように何か商品を所有することで欲求を満たすということから、旅行やレジャーなど思い出や体験を楽しむ方に消費の重点がシフトしてきている。このようなトレンドの中、あらゆるコト消費の中でも、その広がりや体験の強さ、そして比較的繰り返して楽しめる要素があるという点で、スポーツビジネスはこの先ものすごく有望だと見られているのである。
さらにこのような中、これからのスポーツビジネスの方向性にとって大きな指針となり、とてつもないインパクトをもたらすものが、2016年に政府から発表された。
スポーツビジネス15兆円時代の到来
森貴信著/平凡社新書
長らく競技者(選手)のものだった日本のスポーツは、新しいステージを迎え、今後より人びとの暮らしに密着したものになる。すでに起こっている事例を挙げつつ、人・モノ・カネの動きの実際と予想される未来を、スポーツビジネスの最前線で活躍する著者が語る。
そもそも、スポーツは仕事(の場)となりうるのかという疑問に発し、政府が提言する『日本再興戦略2016』のうち、国が〈スポーツの産業化〉を強く後押ししている実態を紹介、その意味をていねいに分析することで、今後、劇的な経済効果を促す異業種との交流や他産業の参入、さらにはスポーツイベントに連動する生活の場と習慣の変化など、スポーツというフィールドに秘められた大きな可能性に迫る。
――進学、就職・転職から共生の場の創出まで、新時代の社会のかたちが見えてくる。